障害とテクノロジー

今回は私自身の障害と日々の生活について、テクノロジーとの付き合いの視点から書いてみたいと思います。

2021年末に原因不明の脊髄炎になり、歩行が困難になりました。
いまは日常生活では車椅子を使用しています。車椅子は私にとって生活に欠かせないテクノロジーのひとつになっています。

車椅子を使うことで日常生活にもだいぶ慣れてきて、最近はあまり不自由なく過ごせています。屋内の日常生活は問題ないのですが、屋外での移動にはまだ苦労しています。そのひとつが階段です。マンションに住んでいるのですが、住居のあるフロアにエレベーターがとまらず、一階分の階段の上り下りをどうにかする必要があります。

そこで購入したのが、電動階段昇降機です。
介護ベット等の購入でとてもお世話になったアビリティーズ・ケアネットから、中古の電動階段昇降機を購入して使っています。リハビリを兼ねて自力で昇り降りをすることもありますが、ほぼ毎日、この階段昇降機を使っています。こちらも生活に欠かせないテクノロジーのひとつです。

そして、もう一つのテクノロジーは、手動運転装置付きの自動車です。日々の通勤や外出に使っています。
車は長男が探してくれたMAZDA MX-30 Self-empowerment Driving Vehicle(SeDV)に乗っています。こちらはMX-30をベースに、手動運転装置を付けた福祉車両になります

https://www.mazda.co.jp/cars/mx-30/grade/sedv/

ハンドル内側にアクセルリングがついており、こちらを押すとアクセルがかかります。ブレーキは左手で操作できるようにレバーがつけられています。このレバーは、ブレーキペダルにつながっており、手でフットブレーキを押し込むようなつくりになっています。購入前には、マツダの開発担当者の方から直接操作説明をしていただきました。ご担当の方いわく、足よりも手の方が細かなコントロールができるとのこと。確かにハンドルをまわしながらアクセルをかけていくのは若干のコツが必要ですが、足での操作以上に、繊細なアクセルとブレーキ操作ができている気がします。また、いわゆる観音開きのドアのため、後部座席に直接車椅子を積み込めることも大きなメリットです。

公共交通機関を使って大学まで行く場合、マンションから最寄り駅まで7分ほどなのですが、ゆるい登り坂が続きます。自力で登り切ることは難しいため、家族に駅まで押してもらう必要があります。駅に着くと駅員さんにお願いして、乗車時にホームと電車の間にスロープをかけてもらいます。降車駅にも伝えてくださるので、電車の乗り降りで困ることはありません。

私の場合は、最寄駅から渋谷駅まで乗り継ぎなしで行くことができます。渋谷駅からは大学前まで路線バスを使います。バスも乗降車を運転手の方が手伝ってくださいますので、問題ありません。複雑な渋谷駅内の移動も係の方が手伝ってくださいます。色々な方のサポートが必要ですが、移動時間も移動に伴う疲労も、自家用車での通勤とは比べられないほど大きいです。

週5日(場合によると週6-7日!)大学に通えるのは、この車があるからこそだと思っています。また単に移動手段として便利なだけでなく、何よりも運転することが楽しいことが、この車の魅力です。車椅子での生活になって、働くことが今まで以上に楽しく感じられているのは、この車で通勤できることも理由の一つかもしれません。

車を使いながら、不自由さを克服するテクノロジーの有り難さを、日々実感しています。もちろん車椅子も階段昇降機も足の不自由さを助けてくれるテクノロジーです。今までは日常生活でも仕事でも、よりよくより便利にするテクノロジーばかりに気を取られていた気がします。しかしながら、当然ながらテクノロジーの役割や可能性はそれだけではありません。不自由さを克服するテクノロジーについて、当事者として実体験を通じて日々考える貴重な機会にもなっています。

教育でのテクノロジーも、学びより豊かにすることばかり考えていた気がします。学びにおける不自由さを持っている方もたくさんいます。学びの不自由さを克服するテクノロジーについても実践を通じて考えています。

バリアフリーのデザインは障害の有無に関わらず誰のためにも役立ちます。バリアフリーな学びのための教育デザインについてゆっくり考えたいと思っています。

ちなみに、車については、もし足が不自由でなくなっても今の手動運転付き自動車を選ぶかもしれません。障害がなくなっても使いたくなる、そんなバリアフリーな教育のための道具づくりを目指したいと思っています。

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