
森ゼミ3年生の企画・運営による子ども向けワークショップ「みんなおいでよ:クリスマスパーティ」を、2025年12月21日(日)に昭和女子大学8号館学生ホールで開催しました。
ワークショップの詳細や学生の感想については、こちらの学科ブログをご覧ください。
今回も、企画から準備、当日の運営まで、すべてを学生に任せています。私(教員)が行ったのは、当日使用する材料の発注、イベントサイト(Peatix)での参加者募集、当日の受付や会場予約などの学内手続きのみです。
私自身も思わず真似してみたくなる、とても素敵なワークショップとなりました。
ここでは、「真似したい」と感じたポイントをいくつか挙げてみます。
まずは、ワークショップのつくり方です。
誰か一人のアイデアではなく、9人のゼミ生が一緒に考えていきます。そして活動概要(つくるもの)がある程度決まった段階で、今度は数名ずつのグループに分かれ、具体的な活動の準備を進めていきます。
横から見ていると、見ていて心地よいほどのチームワークで、準備がどんどん進んでいきます。しかも、とても楽しそうです。思わず一緒に活動に加わりたくなるような、そんな雰囲気の中でワークショップ準備が行われていました。
ワークショップの流れなども、書類としてはまとめません。
ワークショップを企画する際には、指導案のような形で流れを整理することがよくあります。流れを明確にし、複数のファシリテーターが協働するためにはとても有効ですが、どうしても一方向的な構成になりがちです。また、企画したとおりに実施することに、知らず知らずのうちにこだわってしまうことも少なくありません。
学びの場としてのワークショップの強みが、その時その場に集まった人たちが共に活動することで、参加者一人ひとりが学びを得られる点にあるとするならば、一方向的でモノローグ的なワークショップになってしまうと、その強みを十分に活かせないのかもしれません。
その意味でも、企画書はつくらず、ホワイトボードにメモを書く程度にとどめ、あとは準備の過程で作業をしながら口頭でワークショップのイメージを共有していくことが重要に思えました。時には話が脱線し、無駄話になってしまうくらいの、会議とは異なるカジュアルな会話が大切なのだと感じました。
日本での子ども向けワークショップでは、あらかじめ明確な流れを設定することが多いように思います。私自身も、ワークショップを始めた2000年代には、指導案のようなワークショップ企画書をしっかり作成することを意識していました。
書いてみることで流れが明確になるだけでなく、さまざまな展開の可能性を紙の上でシミュレーションできるという利点もあります。参加者によって活動や学びが多様に変化するワークショップだからこそ、事前にあらゆる可能性を想定することが重要だとも考えていました。
確かに、当日参加するファシリテーターを含め、ワークショップで実施したいことを共有するうえでは有効です。しかし一方で、本来は参加者によって変化し得るワークショップを、「実施したいこと」としてこの時点で固定化してしまっているとも言えます。その結果、計画した内容を順番にこなすだけのワークショップになってしまうことも少なくありません。
その意味では、活動や大きな流れは決めつつも、運営スタッフ間で共有するにとどめ、あまり細かく決め込まないことが、結果的にワークショップを「学びの場」として活かすことにつながっているのではないか――学生がつくるワークショップに周辺参加しながら、私自身もあらためて考える機会となりました。
ワークショップの運営についても、役割は決めているものの、各自に過度な責任を負わせるような役割分担にはなっていません。
ワークショップに限らず、仕事全般に言えることですが、役割分担をする際に「ここは○○さん、ここは△△さん」と役割と責任を強く結びつけることで、活動全体を分断してしまうことがあります。責任の明確化はもちろん大切ですが、そもそも「誰かがやる」という信頼が成り立っているコミュニティでは、そこまで厳密にする必要はないのかもしれません。
今回のワークショップで、私が実際に行ったことはほとんどありません。材料発注は助手さんにお願いしましたし、Peatixで参加者募集を行った程度でしょうか(募集のための案内文は学生が作成しています)。
あえて挙げるとすれば、必要になりそうな材料やツールを、手元にあるものから追加したことと、大人も含め、すべての参加者にできる限り声をかけたことくらいです。
ワークショップは「生きもの」だとも感じます。
その日、その場に集まったメンバーでしか、そのワークショップは実現しません。仮に同じ内容で、同じメンバーだったとしても、日が違えばまったく異なるワークショップになります。それは、参加者である私たち自身が日々変わっているからです。
ワークショップに限らず、すべての活動は、変わり続ける自分と他者との関係の中で成り立っていると考えてもよいのかもしれません。学校での授業も、ゼミも、仕事も――日々変わっている自分と他者との関わりの中で行われていることを、あらためて考えさせられるワークショップでした。
教育実践研究としてワークショップを題材にする際、常に悩まされるのが評価です。これまでは、作品そのものや作品に対する振り返り、参加者への質問紙調査、インタビューなどによって評価を試みてきました。
部分的な評価にはなるものの、ワークショップで感じられたことを十分に表現しきれていないという思いは拭えません。「生きもの」としてのワークショップを捉えることで、何かヒントが見えてくるような気もしています。もっとも、生きもの図鑑のように整理してしまうと、再び静的な捉え方に戻ってしまうのですが……。
この点については、次回以降、じっくりと書いていきたいと思います。
何より今回のワークショップで驚いたのは、ワークショップが終わった直後でした。
普段のワークショップと違い、まず学生がはじめたのは、自分の作品づくりでした。
こどもたちの様子を見ながら作りたくなったようです。本当の意味でワークショップですね。
今回もワークショップに関わってくださったすべての皆さまに感謝します。
ありがとうございました。
