
ワークショップを通じて、こどもたちは何を学んでいるのでしょうか。
これは、ワークショップをデザインし、実施する私たちにとって、最も重要な問いのひとつです。
例えば、小学校で実施してきたプログラミングを含むワークショップにおいては、これまでプログラムの成果を評価する試みを行ってきました。2008年には、前年にリリースされたばかりのScratchを用い、奈良女子大学附属小学校で約30時間にわたるワークショップ型の授業実践を行いました。児童はプログラミングの基礎的な練習から始め、自由な作品づくりへと取り組み、その結果、4年生でもプログラミングの基本である「順次」「繰り返し」「分岐」を含んだプログラムを作成できることが確認されました。
また、事前・事後の質問紙調査からは、プログラミングやコンピュータに対する興味・関心の向上も見られました。もちろん、こどもたちの学びや気づきはプログラムの習得にとどまらず、制作過程や作品の題材などを通して、多様な興味の広がりや深化が、ふりかえりノートから確認できました。
Scratchを開発したMITメディアラボ Lifelong Kindergartenグループは、Scratch以前に、電池で動く小型コンピュータCricketを開発しています。このCricketを用いた4年生向け約30時間のワークショップ型授業実践では、モーターやセンサーの制御、外部機器との接続が可能であったことから、こどもたちの作品はより多様なものとなりました。その結果、ふりかえりノートから確認できる気づきや学びの内容も多様であることが明らかになりました。さらに、4時間程度のワークショップ型授業であっても、「順次」「繰り返し」「分岐」を含んだプログラムの作成が可能であり、プログラミングやコンピュータを用いたものづくりへの興味・関心が高まることが確認されました。
こどもたちのワークショップを通じた学びや気づきをより具体的に知るために、私たちは一人ひとりのこどもがもつ、ワークショップにまつわるストーリーを聴いています。当然のことながら、それらのストーリーはワークショップの場にとどまらず、日常生活と深く結びついています。例えば、家族の中で流行している映画作品をモチーフにした作品をつくったり、ワークショップ会場に来ていない弟に見せるために作品の一部を持ち帰ったり、家に戻ってから家族と一緒に再び作品で遊んだり、さらには別の作品を新たにつくってみたりと、ワークショップでの「つくること」や「つくった作品」が、参加者の日常へとつながっているエピソードを数多く聴くことができました。こうしたつながりは家庭内にとどまらず、親戚や友だちへと、作品を介してさらに広がっていきます。
作品を共有することは、作品について説明し、語り、そして一緒に遊び、試すことでもあります。これらの活動を通して、新たな気づきや学びが再び構築されていくことは言うまでもありません。そして、Resnickが示すCreative Learning Spiral(Imagine – Create – Play – Share – Reflect)の通り、共有とふりかえりは、次の作品づくりへの想いへとつながっていきます。
では、このようなワークショップを通じたこどもたちの学びは、どのように評価されるべきなのでしょうか。これは、ワークショップに限らず、学校教育における評価にも共通する問いかもしれません。その場で測定できる瞬間的で静的な評価ではなく、時間や場所を越えて展開していく、より動的でダイナミックな評価の在り方を考えています。
今回のこどもへのインタビューは、「リフレクションワークショップ」と名付け、参加者1名ずつで実施しました。これまでの活動をふりかえりながら、次につくってみたいものを考え、実際に一緒につくっていきます。参加者からは、「たまにはこのように一人で参加するのも面白い」という声も聞かれました。ワークショップの評価において、こどもの声は欠かせません。今後も、こどもたちの学びについて考えるために、リフレクションワークショップを企画・運営しながら、問い続けていきたいと考えています。ワークショップでの学びを考えるワークショップを通して、改めてワークショップそのものについて考える機会を得ています。
ワークショップに参加してくださっている皆さんに、心から感謝しています。
いつもありがとうございます。
