
2025年11月25日 に愛媛県教育委員会が運営する「メタサポキャンパス」で、生成AIを活用したプログラミングワークショップを実施しました。ログイン無しで使える Microsoft Copilot を用いて、HTMLで記述されたウェブ上で動くアプリを作成します。
これまでは、HTML や JavaScript といった言語を習得したり、オーサリングツールの使い方を覚えたりする必要がありました。しかし、生成AIを活用することで、あっという間にウェブアプリを作れるようになりました。
今回のワークショップでは、あらかじめ「HTMLを貼り付ければすぐに実行できる環境」を用意し、子どもたちは生成AIで作ったHTMLコードを貼り付けて動かす体験をしました。
はじめにウォーミングアップとして、生成AIに関する10問のクイズを Kahoot で実施しました。このクイズも生成AI(ChatGPT 5.1)で作成しています。その後、どんな作品が作れそうか・作りたいかのイメージを広げるため、生成AIで作ったさまざまなプログラムを「プレイ(遊ぶ・試す)」しました。そして各自の作品づくりに取り組みました。ゲームからかけ算トレーニングまで、多様な作品が生まれました。
当日は雷が鳴り響いており、子どもたちが驚いていたこともあって、「雷が怖くなくなるためのトレーニングアプリ」を作った参加者もいました。また、10月にも同様のワークショップを実施していたため、参加者からは「前回のワークショップ後につくろうと思っていた作品があったのに、思い出せなかった」というコメントもありました。思い出せなかったこと自体は残念ですが、ワークショップ後にも「つくってみたい作品」を思い浮かべてくれたことは、日常生活のなかでプログラミングを活かせないかと考えていたこともあり、とても嬉しく感じました。
これまでも、Scratch や OctoStudio、あるいは Programmable Battery などのオリジナルツールを使って、子どもたちが「プログラミングを表現手段のひとつ」として活用できるよう取り組んできました。プログラミングを通じて「プログラミング的思考」を育むことは重要ですが、それ以上に、子どもたちが作りたいもの・表現したいものを実現するための道具として、コンピュータやプログラミングに興味をもって取り組めることを大切にしてきました。
生成AIを使うことで、プログラミングそのものを学ばずとも作品づくりが可能になりました。そのため、プログラミングを通じてどの程度「プログラミング的思考」や「コンピューテーショナルシンキング」を育めるのかは、まだはっきりと分からない部分があります。一方で、子どもたちの表現手段のひとつとして考えた場合、自分の表現を実現するための強力なツールとして生成AIを見ることもできます。
実際に生成AIを使って作品(ウェブアプリ)づくりをしていると、うまくいく時もあれば、何度対話してもうまくいかない時もあります。ただ、対話型という生成AIの特徴を活かし、試行錯誤を続けることで、徐々に「自分好みの作品」が生まれやすくなっているようにも感じます。おそらく対話履歴から、AIが個人の趣向を把握していくためでしょう。いずれにしても、「うまくいく時」と「うまくいかない時」の差を強く感じます。これは、プロンプトの入れ方──いわゆるプロンプトエンジニアリング──の問題なのかもしれません。
では、「うまくいく時」と「うまくいかない時」がある状況で、私たちはどんなことを学んでいるのでしょうか。通常のプログラミングで使う言語は決まっており、同じコードに対して同じ結果が返ってきます。しかし、生成AIの場合、同じプロンプトでも必ずしも同じ答えが返ってくるとは限りません。このような生成AIとの対話を通じて、私たちは何を学んでいるのでしょうか。
コンストラクショニズム(構築主義)では、「自分が興味をもてるものづくり」をすることの重要性が強調されています。生成AIを使うことで、自分が作ってみたいもの・興味があるものづくりの幅を、誰もが大きく広げることができます。この場合、「どうやってつくるか」よりも「何をつくりたいか」がより重要になります。
意図したものを作れた時だけでなく、生成AIの偶然性によって思いがけない作品が生まれた時、その過程で、子どもたちを含めて私たちは何を学んでいるのか──ワークショップを通じてゆっくり考えていきたいと思っています。

ワークショップで子どもたちが生成AIで作った作品や、私が試しにつくった作品は、こちらに掲載しています。
